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「欧州市場の冷え込みを、アジア市場で取り返す。その最大のターゲットがインドネシアだ」(自動車メーカー幹部)
東日本大震災、タイ洪水による減産からの“巻き返し”となった今年、日系自動車メーカー各社は、世界各国で大増産計画を立てている。その中でも、成長の牽引役とされているのがインドネシア市場だ。今年に入って、先を争うようにして、各社が生産能力の増強計画を打ち出している。
トヨタ自動車は、現在建設中のカラワン第2工場の生産能力を当初予定より5万台上積みし、第1工場と合わせて2014年初めに年産23万台体制を築く。日産自動車は、約330億円を投じて14年度に年産25万台体制へもっていくことを表明し、新興国モデル「ダットサン」はインドネシアなど3拠点から投入される予定だ。ダイハツ工業、ホンダ、スズキなど主要プレーヤーもこぞって計画を上方修正し、インドネシアへの投資が殺到している。
あるダイハツ幹部は、「すでに明らかになっているメーカー各社の生産計画を合計するだけで、14年度に150万台体制となる。市場の伸びを超越している」と生産能力の過剰感を指摘する。
“過熱”の原因は実にシンプルだ。11年のインドネシア市場は89.4万台となり、洪水被害を受けたタイを抜きASEAN最大の市場となった。一般的に、モータリゼーションが起きる基準とされている「国民1人当たりGDPが3000ドル」を10年に突破している。
この将来有望な市場が、日系メーカーの独壇場になっている。首位トヨタ、2位ダイハツのトヨタ連合でシェア5割を握り、日系メーカーでは94%のシェアを占める。米国でも、中国でも、他の新興国においてでも、欧州・韓国勢に追い上げられている情勢の中で、これほどまでに日系メーカーが存在感を示せている市場など他にない。トヨタ、ダイハツはその地位を堅持するために、出遅れた日産、ホンダも日系優位のうちに確固たる地位を築くために、先行投資に余念がないのだ。