「周りにはやっている人もいるけど……自分はそういうのはしたくない。なぜかというと、財テクを始めるとお金への価値観が変わってしまう気がするから。

 例えば、レギュラーでコンサートの演奏が1本5万円であったとして、これは仕事だからきっちりやる。それとは別に気の合う仲間とバンドを組んでライブをやって、非常に手応えのあるステージができた。メンバーで大喜びしているとライブハウスの店長から渡されたギャラが2000円で、メンバー4人で割ると1人当たり500円。移動費、リハーサル代、楽器の消耗品代などを差し引けば大赤字で、お金の面ではレギュラーの仕事とは雲泥の差がある。

 しかし、だからといってその500円の仕事を見限ってしまってはいけない。

 もともと音楽好きが高じてミュージシャンとして仕事をするようになったのだから、『自分は音楽が好きだ』と再認識させてくれるような現場は大切にするべき。ギャラの良しあしだけを追って仕事を続けていくと、初期衝動が失われたつまらないミュージシャンになってしまう。だから自分はお金にならない現場でも、自分がやりたい音楽ならそれを続けるようにしているし、周りの『いいな』と思うミュージシャンは自分からそうした機会をつくるように心がけている。

 話を戻すと、財テクを始めると500円の仕事をやりたくなくなってしまうような気がして……。もちろんこれは僕個人の話だけれど。生活や音楽にかかるお金は“音楽で稼げるお金”の中でなるべく完結させておきたい」

 然るべきミュージシャンであるために、あえて財テクを遠ざけているのであった。しかし年金と財テクは違う。Bさんには今後年金の支払いが期待されるが、Bさんは老後に向けて「資金をため、ミュージシャン道を極めていく」年の重ね方をするのであろう。

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