落ち込むビジネスマン会社から希望を叶えると言われても、残留することがよいとは限りません Photo:PIXTA

人手不足で強まる
退職希望者への「引き留め」

 売り手優位の転職市場において起こりがちなのが、勤務している会社による退職希望者の「引き留め」です。現在は優秀な人が退職を切り出すと、ほぼ確実に強く引き留められます。

 最近あった事例を紹介しましょう。ある候補者は、海外ビジネス部門への異動を希望していました。しかし、この方はいまの部署で重要な役割を果たしているが故に、希望が通らずにいました。

 そこで転職活動を行い内定を得て、会社に退職を申し出たところ、こんなやり取りがありました。

「なぜ、退職するのか?」
「海外ビジネスの仕事をしたいからです。転職先では給与も上がります」
「わかった、希望の部署に異動させよう。給与も上げるからぜひ残ってほしい」

 このような好条件を出された結果、この候補者は内定を辞退し現在の会社に残留することにしました。

 また、ある大手企業の関連会社でマネジャーを務める30代後半の候補者は、経営に携わりたいという思いからベンチャーへの転職を考えました。内定が出たので退職を切り出したところ、次の人事異動で執行役員へ昇格することが決定。昇格すれば給与も上がるため、この候補者も内定を辞退し残留することにしました。

 最近では、このようにポジションや給与を思い切りよく引き上げる傾向が見られます。それだけ、企業は優秀な人材を必死で引き留めようとしているわけです。

 こうした会社の引き留めに対する候補者の反応はさまざまです。喜んでそのまま受け入れる人もいれば、「そんな簡単に地位や給与を上げられるのなら、なぜいままで希望が通らなかったのか」とむしろ不信感を抱く人もいたりします。