根っからの事業家である亀山啓司DMM.comグループ会長は、USBフラッシュメモリなどのコンセプト設計などで知られるシリアル・イノベーター濱口秀司さんの論文集『SHIFT:イノベーションの作法』をどのように読んでくださったのか? 亀山会長に、「そもそもコンサルという仕事に懐疑的だった理由」や、「自分のように直感的な創業社長が、ビジョンやビジネスを社員に伝えるうえで必要なもの」について、うかがいました!
坂之上(洋子)さんの紹介で濱口さんに会ったんだけど、俺はそもそもコンサルという仕事に懐疑的だったんだよね。有名なコンサル会社に「この業界は市場規模がいくらだから」と意味のない数字を見せられたり、「MAUがKPIでPDCAしましょう」とか、ややこしい言葉を並べられても何の参考にもならなかったからね。
経営や経済を学問として学んでこなかった俺にとっては、実践と現場が全てで真理だった。だから、「コンサルというものは、行き先の分からない経営者が慰めに頼むものだ」という偏見があったんだよ。
そんなわけで、初めて濱口さんに現場のスタッフを引き合わせたときも、「数時間のヒヤリングで現場の何がわかるものか」と思いながら、一番後ろで黙って聞いていた。
彼は「この事業はどこを目指しているの?」「うまくいかないのは何が問題だと思う?」と、穏やかな口調でスタッフたちの意見を引き出しながら、それを論理的に整理し分析していく。そして、スタッフ自らが考えるように誘導していくその手法には、どんな業種にも応用できるロジックが確かにあった。
中でも、俺が一番ショックを受けたのは、彼がホワイトボードにまとめ上げたスタッフたちの考えが、俺の理解と全く違っていたこと。つまり、俺がいかに社員の話を聞いていないか、同時に彼らも俺の考えを根本的には理解していなかったということに気付かされたことだった。
俺のような直感的な経営者には、ビジョンやビジネスを社員に伝える能力がかけている。彼のように論理的にまとめて、それを行動に変えさせるコンサルは、むしろ俺みたいないい気になっている創業社長にこそ必要なものなんだなと思わされたね。
俺はこの本を読んでないので内容については担保できないが、彼の論文がただの机上の空論ではなく、結果を出せる人間の論文だということは担保できるよ。