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世界中で話題の「現代貨幣理論(MMT)」。財政赤字を積極評価する“異端の理論”とも言われるが、提唱者の一人、ステファニー・ケルトン教授(ニューヨーク州立大)に話を聞いたところ、日本の経済・財政に対して驚きの主張を展開した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平、西井泰之)

――講演などでは「日本がMMTの主張の正しさを証明した」と語る一方、「実践しているわけではない」とも述べました。

 日本では日本銀行が大規模な量的金融緩和(QE)を続けてきましたが、インフレやハイパーインフレをもたらさなかったと同時に、力強い経済回復を作り出すことはできませんでした。

 それは、経済成長を支えるために日銀の金融政策に多くを依拠し過ぎて、財政当局者が必要な措置を講じていない点に目を向けていなかったからです。

 MMTが訴えてきたのは、さらなる経済成長を試みる際、経済政策ではもっと財政当局者に信頼を寄せることであり、中央銀行に対する過度な圧力を弱めることです。つまり日本はより積極的な財政政策をとれる余地があったのにしませんでした。

日米英豪などの大国は
借金を返す必要がない

――歴史上、欧州やアフリカ、南米まで財政危機に至った国は多くありますが、MMT的な政策を行って失敗した国はなかったのでしょうか。

 それらの国のいずれも、自国で通貨発行権を持っていません。例えばアルゼンチンやギリシャ、スペイン、ポルトガルのほか、多くのアジア諸国もそうです。

Stephanie Kelton/1969年生まれ。ミズーリ大学カンザスシティ校 元経済学部長。2015年に米国上院予算委員会(民主党)のチーフエ コノミストを務めた。2016年及び2020年大統領選(民主党予備選) における、候補者バーニー・サンダース上院議員の上級経済顧問。Photo by T.U.

 独立的に積極果敢な財政政策を行ってもよいという条件として、通貨発行権を持っていることや、借金をする際には自国通貨建てであることなどを挙げています。この条件に反する場合には、借金を返す義務が生じることになります。

 一方で、日本や米国、英国やオーストラリアなどの国々では、条件を満たしているので政府の返済義務が生じず、財政破綻などの問題は生じません。

――10月の消費増税に対しては、否定的な考えを示されていますが。

 消費増税が適切ではないと考えているのは、増税が景気や消費に与える影響を心配しているからです。それに、日本の消費増税はインフレと戦うために行うものではありません。

 ただし、もし何らかの要因で、急激な物価上昇が起きたら、人々は自分たちの賃金や購買力が侵されてしまいかねません。

 そこで、むしろ購買力を守るためにこそ必要だと理解すれば、国民は消費増税を歓迎するか、少なくとも理解して受け入れやすくなるでしょう。ですから、人々が増税を常に拒否することになるとは思いません。

――財政拡張を続けると、日本国債が海外投資家の売りを浴びて金利が急騰し、通貨安・インフレの歯止めがかからなくなる恐れはないのでしょうか。

 誰もが何かを恐れることができます。しかしそのシナリオが起こり得る合理的な恐怖かといえば、違います。

 これまで日本国債の空売りを仕掛けて失敗に終わったヘッジファンドなどは、この取引に賭けて資金を失ったのが現実です。投機家は日本の通貨に対してネガティブな賭けを行ったり、デフォルト(債務不履行)に近づけようとしたりするかもしれませんが、そんなことは起こりません。日本政府が自ら債務不履行になる可能性はというと、ゼロ%でしょう。

>>ケルトン教授のお話は、この他にも「MMT最適国はどこか」「インフレの懸念は」など多岐に渡ります。インタビューの完全版はダイヤモンド・オンラインで掲載中です。