財政赤字を積極評価する「現代貨幣理論(MMT)」の提唱者の一人、ステファニー・ケルトン教授(ニューヨーク州立大)が来日、講演や経済学者らと討論会などを精力的にこなした。「日本はMMTが数十年、主張してきたことが正しいことを証明した」というケルトン教授に単独インタビューし、MMTから見た日本経済やこれからの成長の処方を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平、西井泰之)
政府債務増えても
物価や金利は低いままだ
――どういう面で日本はMMTの主張の正しさを証明したのでしょうか。
一つ重要なのは、例えばエコノミストの間では、政府の債務残高対GDP(国内総生産)比率について長年、90%という水準が、公的債務の持続不可能になるティッピングポイント(事態が急変しかねない閾値)といわれていました。
いつしかそれが100%だ200%だと変わり、この数字が悪化すれば金利上昇や国債市場のショックが起こるといわれてきました。しかし、200%近くになっても日本では実際には何も起こっていません。
一部の人々は中央銀行が国債を買い続けるとインフレやハイパーインフレが起こりかねないと反論します。ですが、日本銀行が現在、バランスシートの40%を占める日本国債を保有していても、インフレは起きていないのです。
なぜかというと、MMTは、財政赤字が金利を押し上げ、他の形の投資を締め出すような政策とは一線を画すものだからです。
MMTを批判する人は、財政赤字が拡大すれば民間の投資と競合状態になるから物価や金利が上がり、民間投資を抑えるといいますが、MMTでは財政赤字は民間の貯蓄増になるので金利上昇などは起きません。
日本は政府債務が大きいのに低金利のままです。MMTの主張の正しさを証明しているわけです。