しわくちゃのドル紙幣Photo:PIXTA

 昨今、「現代貨幣理論(MMT、Modern Monetary Theory)」なる経済理論が、米国、欧州そして日本でも話題となり、大論争を巻き起こしている。

 今なぜ、MMTなのか。

 景気減速感が強まる一方、金融政策が手詰まりな状況で、「財政政策で活路を」と考える論者や、格差是正やグリーン・ニューディールなどを訴えて財政拡張政策を主張するいわゆるリベラル政治家らが、その理論的な根拠としていることがある。

 だが、このMMTに対して、主要な経済学者や政策当局の責任者たちは、ほぼ全員、否定的な見解を示している。日本でも、MMTに関する肯定的な論調はごくわずかだ。それには理由がある。

「異端の学説」なのか
MMTをめぐり大論争

 MMTが注目を集めているのは、その支持者が「財政赤字を心配するな」という主張をするからだとされている。

 より正確に言うと、「(米英日のように)通貨発行権を持つ国は、いくらでも自国通貨を発行できるのだから、自国通貨建てで国債を発行する限り、財政破綻はしない」というのである。