(この人、何にも悪くないのに。悪いのは私なのに。なんでこんなこと考えちゃうんだろう。怖い。私、今度こそ、人を殺してしまうかもしれない)

 自分を責め、それでも買い物の衝動は止められず、苦悶し続ける清美さんの異変に洋治さんがようやく気付いたのは、留守番中に偶然、消費者金融からの督促状を見つけたのがきっかけだった。金額は数百万円に達していた。

「何やってんだよ、ひどいじゃないか」

 当然激怒されたが、見捨てられはしなかった。

「君はきっと、買い物依存症だね。自分だけじゃどうしようもできなくて、悩んできたんだろう。依存症の専門病院で診てもらおうよ。借金の件は、弁護士さんに相談して、なんとか返そう」

 静かに言われ、驚いた。

「許してくれるの、私、ひどい女だよ」

「ああ、惚れた弱みかな(笑)。それに君は、子どもの母親でもあるからね。僕は絶対離婚はしないって決めているんだ。自分が、子どもの頃に親が離婚して辛かったから」

 うれしかった。今度こそ、改心しようと思ったが、全然自信はない。

(きっと私、またこの人を裏切ってしまう。あぁ、もっとお金持ちと結婚すればよかった)

 不安と身勝手な不満を抱きながら、依存症専門外来への通院を開始した清美さんだった。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)