――福澤組の雰囲気はどうですか?

 『陸王』の時にお世話になった方が多いので入り込みやすかったです。じつは僕がラグビーを始めたきっかけはドラマ『スクール・ウォーズ』と慶應義塾大が社会人ラグビーのトヨタ自動車を倒して、日本選手権で優勝したタイミング。ラグビーは本当に盛り上がっていました。中学1年生だったのですが、ラグビースクールの体験会で秩父宮ラグビー場に行ったら、慶應義塾大の優勝メンバーだった当時の福澤監督がそこにいた。「迫力があるなー、かっこいいなー」と思ったことを今でもよく覚えています。その人と日曜劇場の現場にいられる。それだけでうれしいんです。

――撮影への意気込みも違いますか?

 演技について評価してくれる人が少なくて、良かったのか悪かったのか分からないままのことがときどきあります。でもジャイさんはダイレクトに評価を言ってくれる。だから、その期待に応えられるようにしたいです。

――主演の大泉さんはどんな方ですか?
 
 引き出しの多い魅力的な方です。アストロズのメンバーは皆その魅力にイチコロでしたが、エキストラの方までを引き込みその気遣いと話術は真似できるものではありません。大泉さんのそういう幅の広さが今回の君嶋隼人にぴったりだなと思います。

 『陸王』でご一緒した主演の役所広司さんに「声のトーンを変える事によってその台詞にもたせる意味と伝え方を変えている」というお話を伺ったのですが、大泉さんも毎回の長いシーンで言い方や動き方、表情を変えていらっしゃる。そして、その前後のシーンで何を伝えたいか、そのシーンと台詞が何のためにあるかを深く掘り下げ、今やる演技についての意見を言ってくださる。演じるにもいろいろなやり方があるんだなと学ばせていただいてます。

――撮影秘話を教えてください。

 毎日が大変です。試合は80分で終わる。撮影は10時間に及ぶこともあり、高校生の合宿よりもグラウンドに立っている時間が長いと話しています(笑)。自分自身に関して言えば、ジャイさんから「でかくなれ」と言われて、ウェイトもして、プロテインを15年ぶりくらいに飲んでラグビー体型を作るように取り組んでいます(笑)。

――俳優としての目標は?

 与えられたものを粛々とこなした先に、面白い世界が広がればいい。経験を積むほどいろいろな景色が見えてきます。これからどんな可能性が広がるのか楽しみです。

――『ノーサイド・ゲーム』の見どころは?

 池井戸さんが描かれる、弱者が強者に立ち向かいさまざまな葛藤と戦いながら勝ち抜いていく爽快感に、ラグビーが持っている熱量が加わっているところだと思います。企業と蹴球協会、常務と工場の総務部長、会社の予算に対して魅力の低いコンテンツのラグビー部、会社のM&Aの話と株価、人事評価。そこに関わる人々がどのような想いで何に立ち向かいどのような結果を出していくのか。

 3話のセリフにもあった「この国からラグビーそのものが消えかかろうとしてるんじゃないか」という言葉はラグビー経験者にはとても重い言葉でした。現在ラグビー業界はワールドカップ以降のラグビーのあり方について議論が進んでいると聞きます。応援をしてくれるファンのため、プレーをしてくれるプレーヤーのため、コンテンツとしての魅力を高めるため、アストロズが何をしていくのか、最後に称賛の声を浴びる事ができるのか。このドラマを通じてラグビーに興味をもつ人が増えて欲しいと思う。そして、ラグビーがもっと子供たちに夢を与えられるような物語へと進んでいくといいですね。

※本連載は雑誌『TV station』との連動企画です。
写真提供:TBS

未来につながる、パスがある。
大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員だった君嶋隼人は、とある大型買収案件に異を唱えた結果、横浜工場の総務部長に左遷させられ、同社ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。
かつて強豪として鳴らしたアストロズも、いまは成績不振に喘ぎ、鳴かず飛ばず。巨額の赤字を垂れ流していた。
アストロズを再生せよ――――。
ラグビーに関して何の知識も経験もない、ズブの素人である君嶋が、お荷物社会人ラグビーチームの再建に挑む。

『ノーサイド・ゲーム』

池井戸潤
ダイヤモンド社 刊
定 価:本体1600円+税 
発売日:2019年6月13日