「双子の息子の塾代が今月から値上げして月7万円。まだ中学生だし、これから教育費がもっとかかるの。家のローンも65歳まで返済が残っているし…。このままじゃ貯金は減る一方。不安で夜も眠れないわ」
「そう言われても、この先、俺の収入が増える見込みはないしなぁ」

 妻が提案する。

「そうだ、土日にバイトでもすれば?隣のBさんの会社とかどう?」

 Aの妻はBの妻と仲良しで、いつも「誰かウチの仕事を手伝ってくれる人はいないかしら?」と聞かされているという。Aは即座に首を横に振った。

「バイトなんて嫌だよ。それに会社が認めるかな?」

 あまり乗り気ないAに、妻は語気を強めて言い返した。

「聞いてみたらいいじゃない?とにかくわが家の家計は非常事態なの!今すぐバイトして!」

 あまりにも妻がうるさく言うので、Aは夕方、B社長宅に出向いて話を聞いた。仕事内容は会社の顧客(個人宅や会社事務所)の庭や花壇の手入れ等の軽作業、報酬は1日当たり8000円。勤務は都合のつく日だけでいいという。Aは条件を聞くうちに乗り気になってきた。

「庭いじりは嫌いではないし、月3日ぐらいだったら働いてみようかな」

 そして勤務条件をメモ書きすると、B社長には「会社に確認したら、返事します」と伝えた。

 翌日Aは、C部長にメモを見せながら副業をしたい旨を相談した。C部長は尋ねた。

「仕事の内容はわかりました。ところでAさんは月に何日バイトしますか?」
「3日です」
「3日なら本業への影響もなさそうなので許可します。『副業届』を私まで提出して下さい」

 副業許可を取ったAは、翌週からバイトを始めた。出勤希望日の3日前までに乙社に連絡すると、毎回現場の住所と訪問時間が案内された。場所はAの自宅から車で片道30分以内の近隣ばかりで、作業が終わるとその場で顧客から報酬を受け取り直帰できた。月3回のペースなら本業にも支障なく、仕事も楽しい。Aはこの状況に満足していた。

妻と社長の要望で
バイト日数を増やしたら…

 7月下旬の休日、自宅でくつろいでいるAを見るなり妻が大声で怒鳴った。

「もう梅雨は明けたのよ!家でゴロゴロしてないでバイトへ行って!」