「お前ら、無責任だな!仕事もろくにできないくせに!とんだ給料泥棒だ!」

 すると、社員たちも言い返した。

「俺らは何も会社に貢献していなかったって言うんですか!?」
「そうだろ。なのに突然、退職届を出してきて、無責任だ!」

 柳川部長の言葉を聞いた社員たちは、皆怒り心頭で、「やってられるか!」と言うと次々に退職届を叩きつけ、部屋を出て行こうとした。

 すると、黙って聞いていた社長が「ちょっと待て」と社員たちに声をかけた。

「昨日、瀬谷課長から退職の話が出て、俺もショックを受けた」

 社員たちは一斉に足を止めると、振り返って社長の話に耳を傾けた。

「全部俺の責任だ。申し訳なかった。瀬谷課長も君たちも退職することはない」

 社長が皆に言うと、柳川部長に向かって言った。

「柳川部長、社内混乱の原因は君だ。責任をとって辞めてくれ」

 社長に突然退職を促された柳川部長は、目を見開いて驚き、「本気ですか?」と上ずった声で確認した。

「あぁ、本気だ。今までも何度か注意してきた。だが、他の社員が皆退職を決意するほど社内の士気が落ちているとなると、問題だ」
「俺は創業からこの会社を支えてきたんだぞ!」

 柳川部長は真っ赤になって社長に食って掛かったが、社長の決意は固かった。

「今までの働きには感謝しているが、部下にNOを突き付けられた以上、もう君の居場所はないだろ?」

 社長は社員が投げ出した退職届を拾って破り捨て、頭を下げた。

「君たちにはこれからも会社を支えてほしい。本当に申し訳なかった」

 社員たちは溜飲を下げ、退職を踏みとどまった。一方で、柳川部長は社長から切り捨てられたことがショックだったのか、その日のうちに退職届を出すと、自ら辞めていった。