「年金の財政検証」のニュースが
あっという間に収束したワケ
年金制度の健康診断である「公的年金の財政検証」が先週発表になった。5年に1度のこの検証、今年は6月に「老後資金2000万円問題」が勃発したため、前回よりも注目度が大きくアップすると思われていた。
しかし、厳しめの将来予測が多い結果だったにもかかわらず、「2000万円問題」のときほど、長期間にわたって大きく取り上げるメディアはなく、テレビで「街の声」を聞く場面も少ない。通常の「流れていくニュース」で収束しそうな気配である。
メディアが大きく取り上げないのは、なぜか。また、読者や視聴者の反応が弱いのはなぜか。その理由を考えてみた。
まず、なんといっても「難しい話」だからだろう。財政検証の結果をひもとくには、年金制度の知識のみならず、前提条件や過去の結果の流れについても知っておく必要がある。毎日、異なる分野のニュースを追いかけている新聞記者やテレビのディレクターは、発表されたものを「早く理解して、報道する」能力に長けている。
しかし、そうした能力を持っていても、年金の財政検証のネタをわかりやすく、そして読者や視聴者が自分ごととして受け止められるようにアウトプットするのは簡単ではなかったのだろう。
大きなニュースがあったときは、新聞各紙を一通り買って読み比べてみるのだが、今回は読売新聞がわかりやすかった。一面は政治部の記者が書いているが、中面の特集ページは社会保障部の記者数人が担当している。日頃から年金制度を追いかけている記者たちが書いているので、記事に奥行きがある(読売新聞に社会保障部という部署があるのを今回はじめて知った)。
とりわけ1ページ全面を使った「基礎からわかる年金財政検証」の特集が秀逸。5つのQ&Aで記事が構成され、年金制度の仕組みの解説から、財政検証の結果を踏まえて私たち生活者がとれる対策まで言及している。発表前から原稿の準備していたのだろう。他紙でこうしたページがなかったのがちょっと残念だった。