欧州の巨大企業2社が今年、経営統合に関する交渉の席に着いた時、そこに呼ばれていたのは米国の銀行だった。
フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)はゴールドマン・サックス・グループを主幹事として採用。ルノーはゴールドマン出身者で固めたブティック銀行にアドバイザーを依頼した。欧州自動車業界の再編につながる統合計画だったが、フィアットとルノーを1世紀以上にわたり支えた欧州の銀行は、ウォール街の投資銀行2社に押し出された。
国際金融システムを崩壊寸前に追いやった危機の発生から10年が過ぎた今、世界の金融を支配しているのは米国の銀行だ。データ会社コアリションによると、米銀は昨年、世界の投資銀行手数料の62%を稼いだ(11年は53%)。また合併手数料の7割、株式売買の手数料の6割を手にした。
規模や収益性が米銀に劣る欧州の銀行はウォール街から退散している。ドイツ銀行は投資銀行部門で数千人を解雇した。UBSグループは米コネティカット州スタンフォードの巨大トレーディングフロアから引き揚げ、プライベートバンクとしてのルーツに再び軸足を置いた。