心の奥底の“物語”に悩む人も
醜形恐怖症を克服する方法とは?

 醜形恐怖症に効果があるとされるのは、SSRIという薬だ。神経伝達物質のセロトニンを増やす作用を持つ、抗うつ剤の一種である。

「3分の2くらいの患者さんはSSRIで症状が軽快します。なかなか薬が効かない場合は、カウンセリング治療を重ね、様子を見ます。すると、大抵の人が心の奥底に抱える“物語”に悩んでいる。たとえば姉妹が美人で、幼いころから比べられて辛い思いをしてきた、など。そういうときは『あなただっておきれいだと思いますよ。でも、妹さんほどじゃなかった。だから傷ついたんですよね。その痛みが“自分は醜い”という誤解を生んでいるだけ。自分で誤解を解かないと、何回手術しても心の傷は癒えませんよ』と話します」

 社会不安障害のひとつ、対人恐怖が症状の背後に潜んでいるケースもある。その場合は、まず認知のゆがみに気づいてもらう。

「みんなはあなたを醜いなどと思っていない。あなたが自分を醜いと信じているから、他人がそう思っているように感じるだけ」と説得する。

「根本にあるのは不安、つまり人間としての自信のなさ。美容整形は不安を一気に解消してくれるファンタジー(幻想)のようなものと感じてしまうのではないでしょうか。その意味では極論を言うと、覚醒剤に似ているかもしれません。もちろん、美容整形自体が悪いとは思いませんし、本当に自信がつき、幸せになれるのなら素晴らしいイノベーションです。しかし、根本にある不安を克服できないのならば、何度繰り返しても、どれだけお金をつぎ込んでも満足することはないのです」

 アプリや美容整形の力を借りずに、自信のなさや不安を克服する方法はあるのだろうか。

「本当の自分を受け入れることでは。特別な美貌もない、若さも失った、欠点だってある。そんな自分を『しょせんこの程度なんだ。だけど、そう捨てたもんじゃない』と思えれば、背伸びをする必要がなくなり、『生きてるっていいな』と楽になれるんじゃないでしょうか。毎日、3つ星レストランの料理を食べ歩くことはできなくても、自分で作った普通のカレーライスをおいしいと思えたら、ハッピーでしょう?

 心理学では、自分のリアリティを受け止められた時に青年期が終わり、成人期が始まる、と捉えます。“自分は特別な存在”という思春期にありがちな幻想を捨てて大人になれば、醜形恐怖症は克服できるはず」

「きれいになりたい」「若々しくありたい」という気持ちは、誰にでもあってあたりまえだ。だが、その願望に振り回されることなく、うまく付き合っていくのが幸せに生きるコツなのかもしれない。

(フリーライター さとうあつこ)