トランプ大統領(左)に説明をするナバロ通商担当大統領補佐官(右)
大統領執務室でトランプ大統領(左)に説明をするナバロ通商担当大統領補佐官(右) Photo:Mark Wilson/gettyimages

「貿易戦争は良いことだ。勝つのは簡単だ」「私はタリフ(関税)マンだ」。ドナルド・トランプ米大統領は中国などとの貿易戦争を本格化させ始めた際にそう語った。しかし、中国は彼が当初期待したような反応を全く見せてくれない。

 中国の報復を受けて、経済的窮地に陥る米国の農家が増えている。8月下旬には200社を超える履物産業の企業も関税引き上げの打撃を米政府に訴えた。ところが大統領はツイッターで「こんな小さな関税で不満を述べている企業は経営が下手だからであり、非難されるべきは彼らだ」と反論した。

 これには米産業界や経済学者が反発している。しかし、大統領は関税をエスカレートさせながら中国をどう喝する戦略を再考しようとしない。彼はピーター・ナバロ通商担当大統領補佐官の影響を強く受けている。

 ナバロ氏は筋金入りの強烈な対中強硬派の経済ナショナリストである。米誌「フォーリン・アフェアーズ・リポート」2019年9月号に掲載されていた論文「米中経済ディカップリングの意味合い」(C・P・ボウン、D・A・アーウィン著)によると、彼は17年に「米国と中国をつなぐサプライチェーンを引き裂きたい」と語っていた。世界経済にはかなり危険な考えである。