欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は教養のある人物だ。だからこそ勘ぐりたくなるのだが、フランスの実存主義文学、特にジャン・ポール・サルトルの「出口なし」が好みなのだろうか。ドラギ氏は、今年秋に8年の在任期間を終えるころには、マイナス金利と量的緩和の解消にかじを切っているはずだと考えていただろう。しかし同氏は、元の金融政策に戻ってしまった。ドラギ氏は12日、欧州のリセッション(景気後退)を回避するため、ECBが量的緩和を再開し、毎月200億ユーロ(約2兆3950億円)程度の資産購入を無期限で実施すると発表した。民間銀行が中銀に預け入れる準備預金の金利も、マイナス0.4%から、マイナス0.5%に引き下げられる。銀行の企業向け融資に対する支援策の一部も再調整される。
【社説】出口戦略なしに退任するドラギ氏
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