「住みたい街」と「実際に住める街」は違う。年収や価格などの条件から現実に購入できる物件には制約があるからだ。では、それらを踏まえた「リアル」に人々が注目している不動産とはどこか。「ヤフー検索」のビッグデータから解き明かす。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
「住みたい街ランキング」ではなく
「実際に住める街」の注目上昇度ランキング
吉祥寺、恵比寿、横浜、大宮――。首都圏を対象にした「住みたい街ランキング」で名前が挙がる常連の顔触れだ。
しかし、賃貸であればまだしも、不動産を購入しようとする場合、多くの人々にとってそういった街は高根の花であることがほとんどだろう。世帯年収や金融資産の額、家族構成、勤務地、物件価格といった条件を考慮していくと、おのずと対象から外れていってしまう。「住みたい街」と「実際に住める街」は違うのだ。
では、不動産の購入を考えたとき、「実際に住める街」という現実的な目線で探してみると、どんな街の注目度が高いのだろうか。そこで今回ダイヤモンド編集部では、ヤフーが10月に提供を開始するデータソリューションサービスに先駆けるかたちで同社の協力を得て、マンション(戸建ては含まず)の立地に関する独自のランキングを作成した。
分析対象は、「ヤフー検索」の検索キーワードだ。アンケート調査の回答結果などと比べると、見えや遠慮などのバイアスがかかりづらく、より人々のホンネがあらわになるとされるインターネットの検索行動。それらが積み重なった検索結果のビッグデータを基に、その名も「マンション立地注目上昇度ランキング」を導き出した。
なお、今回の分析は全て、個人を特定できないように、ヤフーのデータを統計化した上で行っている。
全体のダウントレンドを打ち返す
根強い注目度を誇るエリアとは
ランキングの作成方法は次の通りだ。
(1)検索キーワード(検索時に打ち込んだ言葉)抽出条件
・「マンション」に加え、「中古」or「新築」or「分譲」を含む(「戸建て」は対象外とした)
・「賃貸」を含まない
(2)対象エリア
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
(3)データ抽出期間
2014年7月~19年6月(5年間)
・1期:14年7月~15年6月
・2期:15年7月~16年6月
・3期:16年7月~17年6月
・4期:17年7月~18年6月
・5期:18年7月~19年6月
(4)ランキング指標である検索数上昇率の算出方法
5期の検索数÷1期の検索数×100(%)
(5)フィルター(足切り)条件
・5期の検索数÷1期の検索数(5年間での上昇率)が100%以上
・5期の検索数÷4期の検索数(直近1年間での上昇率)が100%以上
・対象エリア内の全地名・駅名のうち、5期(直近1年間)における総検索数の上位25%以内
・突発的に検索数が上昇したものよりも、日々じわじわと検索数が上がってきている地名・駅名を見つけられるように、1~5期における1カ月ごとの検索数の推移を基に独自にスコア化した「安定上昇係数」が0.3以上
以上の条件に当てはまった全34の地名・駅名を対象にランキングした。
検索キーワードに「マンション」だけではなく「中古」や「新築」などの言葉が含まれることを条件に加えたのは、ある程度真剣に購入を検討していると予想される検索を抽出する効果を意図してのことだ。これによってランキングの「リアルさ」を高めようと考えた。
ちなみに、今回のデータ抽出期間におけるマンション購入関連キーワードの検索数はダウントレンドを描いていた。5期(18年7月~19年6月)の検索数は、1期(14年7月~15年6月)と比べてほぼ半減。近年は新築物件を中心に不動産価格の高騰が叫ばれ、消費者の購入意欲が減退しているという指摘がある。検索数の減少もそれを反映した結果ではないかと推測される。
そのため、今回作成した「マンション立地注目上昇度ランキング」が導き出したのは、全体の傾向がダウントレンドでありながらも検索数が安定的に上昇してきた、根強い注目度を誇る不動産エリアということになる。不動産価格が高騰する中で、多くの人が予算や利便性などをてんびんに掛けていって探した結果なのではないかということがうかがえる、「リアル」なランキングなのだ。
では、まずはトップ20から見ていこう。