「勇気をもらったよ」「夢をありがとう」――。上野動物園で生まれ、わずか7日目に幼い命を閉じてしまったパンダの赤ちゃんを悼む声が、日本中に溢れている。東日本大震災直後に公開され、パンダブームを再燃させたシンシンとリーリーの子どもが死んだことにより、パンダブームは腰折れしてしまうとも思われた。ところが町中からは、「これからも、もっとパンダを見に行きたい」という前向きな声が、数多く聞こえてくる。半世紀近くにわたって老若男女を魅了し続ける「パンダビジネス」の魅力とは、果たして何なのか。背景を分析すると、我々の想像を超える経済効果と、それを生み出す「魔法」の正体が見えてきた。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)
赤ちゃんパンダの「早すぎた死」
喜びから一転、日本中を包んだ悲しみ
パンダの赤ちゃんが死んだ――。
そんなニュースが駆け巡ったのは7月11日のこと。上野動物園(東京都恩賜上野動物園)で東日本大震災直後に公開され、日本中に明るい話題を振りまいた2匹のジャイアントパンダ、「シンシン」(メス)と「リーリー」(オス)の赤ちゃんが、生後わずか7日目で幼い命を閉じてしまったというのだ。
7月5日に誕生したこの赤ちゃん、上野動物園のジャイアントパンダとしては24年ぶりの誕生となった。性別はオスで、体重は133.1グラムだったという。上野動物園のHPによると、シンシンとリーリーは3月25日と26日に交尾。妊娠期間は83~200日が普通とされているが、シンシンは103日目で出産を迎え、安産だったという。
しかし、11日の午前7時30分頃、心肺停止状態になったところを発見され、係員が心臓マッサージを行なったが8時30分頃には死亡が確認された。死因はシンシンの授乳に起因する肺炎の発症ではないかと言われているものの、真相は定かではない。
上野動物園の土居利光園長は、会見中に「ただただ残念」と涙を拭いた。パンダは人工繁殖や飼育が困難な動物だとされているが、今回、改めてその難しさが浮き彫りになった格好だ。