もちろん、アキコさんの住む地域にも、遠く離れたショッピングモールやドラッグストアに車で買い物に行けば、より安価な選択肢が存在する。しかし現在の生活保護は、原則として、車の所有と運転を認めていない。アキコさんにとって最も安価なトイレットペーパーは、「セコマ」の12ロール入りの商品だ。それが、アキコさんの唯一の「駆け込み消費」になる。

痛手は交通費
バスはひかえるしかないのか

 さらに痛手となるのは、鉄道やバスの運賃値上げだ。JR北海道は、3kmまでが170円から200円へ、約18%の値上げとなる。「便乗値上げ」どころではないのだが、過去に見送られてきた値上げが積もりに積もった末の、止むを得ない値上げである。鉄道に比べるとバスの値上がり幅は小さいため、鉄道よりバスを選択する地域住民が増えそうだ。それは、鉄道の赤字路線がさらに赤字化することにつながりかねない。もともとアキコさんが住む地域では、車社会化が進んでいる。それは、大都市部以外の日本の「ふつう」の光景だ。

「交通費が痛いから、極力、歩いています。雨や雪が激しいときはバスに乗りますが、ちょっとくらいなら傘をさして」(アキコさん)

 中心街まで片道3キロメートル、往復6キロメートルの距離を、アキコさんは毎日のように、数年前に手術を受けた脚で歩いている。バス料金が値上がりすると、荒天の日には「出かけない」という選択が増えるかもしれない。もともと、身体や精神の疾患を抱えている人は、さらに出かけにくくなりそうだ。

 そしてアキコさんは、精神疾患の治療を受け続けている精神障害者でもある。もともと学校の養護教員、いわゆる「保健室の先生」だったけれども、結婚による離職、そして夫によるDVから心を病み、生活保護以外の選択肢がなくなる成り行きをたどった。けれども今、アキコさんには「障害者作業所に通う」という日課がある。