かけっこ足の速さは生まれつきのものではありません。正しい練習をすれば必ず速くなります

運動会シーズン真っただ中。「足が速くないから…」という理由で、憂鬱な気分になっているお子さんをお持ちの親御さんも少なくないでしょう。しかし、足の速さは必ずしも生まれつきの能力だけで決まるものでありません。ちょっとした練習で、足を速くすることが可能なのです。サッカー日本代表であり、所属するベルギーのチームでは「閃光のように速い!」と称賛されている伊東純也さんが、親子でできる「足が速くなる2つの練習法」を紹介します。

「うちの子は足が遅いから…」と
諦めるのはもったいない!

 連日続いた猛暑も、ようやくひと段落。いよいよ秋の到来です。

 読書の秋、食欲の秋などと言いますが、私にとっての秋は断然、運動会のシーズン。

 私は子どものころ、運動会が大好きでした。運動会の花形といえば、クラス対抗リレー。かけっこが得意だった私は、いつもアンカーとして大活躍できたからです。大歓声を浴びながら、先行するライバルを鮮やかに抜き去り、いちばんでゴールする。いまでも、あのときの快感が甦ります。

 毎日が運動会だったらいいのに……。

 能天気にそう思っていた私とは正反対に、運動会なんかなくなればいいのに……と思っている子どもは少なくないようです。私は大人になって、そのことを知りました。

伊東純也伊東純也(いとう・じゅんや)
プロサッカー選手。AFCアジアカップ2019日本代表。1993年3月9日生まれ。神奈川県横須賀市浦賀出身。地元の鴨居SCでサッカーをはじめる。その後、横須賀シーガルズ、神奈川県立逗葉高等学校、神奈川大学を経て、ヴァンフォーレ甲府に入団。プロデビューは2015年3月14日、Jリーグ1stステージ第2節名古屋グランパス戦。2016年に柏レイソルへ移籍。翌2017年に日本代表に初選出。同年8月13日の第22節清水エスパルス戦では、70メートルもの距離を、快足を生かしたドリブルで独走し、ゴールをマーク。その年のJリーグ優秀選手賞を受賞した。2019年2月にベルギー・ジュピラー・プロ・リーグ、KRCヘンクに移籍。加入してすぐに、身体能力の高い外国人選手を置き去りにする、圧倒的なスピードで大活躍。「青い旋風が駆け抜けた!」「閃光のように速い!」と、地元紙やファンから惜しみない賛辞が贈られている。

 運動会のリレーで抜かれて、仲間たちに迷惑をかける。不格好な走りを、仲間たちに笑われる。選抜選手に選ばれず、悔しい思いをする。

 かけっこは、あくまでもその子の人生の一部分。仮に足が遅くても、勉強や音楽、美術といったほかの分野でがんばればいい。私は以前、そんなふうに考えていました。

 しかし、事はそう簡単ではないようです。というのも足が遅いというコンプレックスから、すべてに対して自信が持てなくなってしまう、引っ込み思案になってしまう子どもが、とても多いというのです。

 また近年では、お受験に「運動試験」を取り入れる小学校や中学校が出てきました。試験の中でかけっこや体操を行う学校もあるそうですが、必ずしも速く走らなければいけない、美しく体操できなければいけない、というわけではないようです。ただ、そうはいっても走ることが苦手なよりは、得意なほうがいいでしょう。

 かけっこについて考えていて、私はあるとき気づきました。

 かけっこが苦手で、すべてに消極的になってしまう子どもが多いということは、かけっこで自信がつけば、すべてに対して積極的になれるはずだ――。

 かけっこについて、世間で大きく誤解されていることがあります。それは足の速さ(遅さ)は生まれつきのものだ、ということです。