男性の乳がん写真はイメージです Photo:PIXTA

 今月は乳がん啓発活動「ピンクリボン」月間だ。

 男性には他人事に思えるかもしれないが、乳がんの0.5~1%は男性患者だ。毎年600人弱の男性が乳がんと診断されている計算になる。好発年齢は女性より少し上の50~60代だ。

 男性の場合「まさか?」という思い込みもあって、早期発見が難しい。次にあげる乳がんの「リスク因子」を保有している男性は、35歳から毎日の自己触診と、健康診断の折に医師の触診を受けるようお勧めしたい。

 男性乳がんのリスク因子は(1)家族歴、(2)胸部への過度な放射線照射、(3)女性ホルモン(エストロゲン)過剰の3点だ。

(1)家族歴については、第一度近親者(親、姉妹、子)と、第二度近親者(祖母、おば、めい、孫)に乳がんの患者さんが1人以上いるなら「乳がん遺伝子」を保有する家系の可能性がある。

 乳がん遺伝子は、同時に前立腺がんや膵臓がんのリスク因子でもある。該当する方は、自分が保因者かどうかを知るために、遺伝子検査を受けてもいいだろう。

(2)については、高線量の被ばくが乳がんリスクを増加させることは確実。職業との関係や、子どもの頃に繰り返し胸部レントゲンを撮っている、などの経歴がある場合はリスクが上昇する。

(3)の背後には、肝硬変や男性ホルモンの分泌低下が隠れているケースが多い。睾丸萎縮や女性乳房化がある場合は、泌尿器科で相談してみよう。

 男性乳がんの自覚症状は、女性と同じく乳房周辺から脇に生じるしこりだ。このほか、乳房にくぼみやシワが生じる、乳頭、乳輪が赤く腫れることもある。

 皮膚病だと思い込み、受診が遅れるケースも少なくない。違和感があるなら迷わず「乳腺外科」を受診してほしい。敷居が高く感じるなら、配偶者や親戚の付き添いを装うのも手だ。

 昨年1月、NPO法人キャンサーネットジャパンは「男性乳がんの会『メンズBC(ブレストキャンサー)』」を立ち上げた。

 誰にも相談できずに悩んでいる方は連絡をしてみるといい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)