医師を本気にさせるために
患者よもっと賢く、うるさくなれ

 世の中には、あまり知られていない眼病がこんなにたくさんあるのかと、若倉先生の近著『心療眼科医が教える:その目の不調は脳が原因』(集英社)を読んだ人は皆、驚くに違いない。そして、前出の女性患者同様、「そんなことも知らない」眼科医の多さに憤りを覚えるだろう。

 それだけではない。日本の公的支援制度が、いかに支援を必要としている人たちを拒絶するかのような内容になっているのかとあきれ、不安にならずにはいられない。

「あまりにも、物事を分かっていない眼科医が多いとか、日本の医療全体がゆがんで、薬漬けになり過ぎているとか、制度に問題点があり過ぎるとか、いろいろなことが見えてきて、これは広く社会に知らせなくてはいけないと思うようになったのは、井上眼科病院の院長になったあたりからです。

 医者の世界の中で、完結しているのはよくないなと。

 それで、民主的な医療をしないといけない。医者を本気にさせて、ちゃんと勉強するようにさせるには、患者さんである国民が賢くならなきゃだめですよというつもりで一般書を書き始めました。

 僕の本を読んだ患者さんは、うるさくなりますよ。何かを訴えたり、主張したりしない患者さんに対して、医師は、病気も症状も大して困っていないのだろうと判断し、踏み込んだ積極的な姿勢をなかなかとりませんからね。

 患者が自分の受ける医療に対して、積極的に理解しようとする覚悟、そして医師に丸投げするのではなく、自分も治療に参加するのだという自己責任を伴った姿勢を見せることが、医師を本気にさせる秘訣です」

 15年4月からは、NPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、目の悩みや不調を抱える人たちに助言を与える活動も開始。医師から一般の人たちまで、幅広い層の“目からうろこを落とす”取り組みに心血を注ぐ毎日だ。

◎若倉雅登(わかくら・まさと)
井上眼科病院(東京・千代田区)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学大学院医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。『医者で苦労する人、しない人――心療眼科医が本音で伝える患者学』『絶望からはじまる患者力』(以上春秋社)、『心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因』(集英社)、医療小説『蓮華谷話譚(れんげだにわたん)』(青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組んでいる。