大谷翔平選手のように、自分より圧倒的に優秀な後輩や部下が現れたとき、人はどう振る舞うべきなのだろうか。嬉しい反面、どこかでライバル心や焦りを感じてしまう――そんな複雑な感情に覚えがある人も多いはずだ。『人生は期待ゼロがうまくいく』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念した本稿では、ライターの柴田賢三氏に「才能よりも大切なこと」についてのエッセイをご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)
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大谷翔平クラスの
メジャーリーガー級新卒社員
野球の世界一決定戦WBCが盛り上がっている。
大谷翔平選手をはじめ、全員がどのチームでも4番で打てるような強打者を揃え、見事に全勝で1次ラウンドを勝ち上がった侍ジャパンだが、そのチームを率いる井端弘和監督の苦労は想像を絶するものだろう。
日の丸を背負う重責だけではない。大谷などは、井端監督本人の現役時代とはまったく次元の違うレベルにいるからだ。とんでもなく優秀な“部下”に、上から指示を出さなければならない上司ほどツラい立場はない。
私が以前に所属していた会社で、こんなことがあった。
新卒で入ってきた小谷くん(仮名)という社員が研修を終え、現場に実戦配備された途端、任された仕事で次々と成果を挙げ、社内がザワついた。
彼の優秀さはまさに異次元で、業界は違えども“大谷レベル”の突出した新人だったのだ。そんな小谷くんが配属されたチームを率いていたのは、仕事はできるがプライドも高く、性格にクセのある塚田さん(仮名)という課長だった。
塚田さんと喫煙所で一緒になったとき、小谷くんの話題になった。
「あんな優秀な部下が来たら、嬉しい反面、やりづらくないですか」
「いや、ぜんぜん。小谷くんほどの人材は、僕くらいじゃないとコントロールできないでしょ」
冗談めかしてはいたが、まんざらでもない様子だった。
しばらくすると、「小谷くんのパフォーマンスが落ちてきた」という噂が聞こえてきた。さすがのスーパールーキーも壁にぶつかったのかと思ったが、どうやら上司の塚田さんとギクシャクしているらしい。
小谷くんのチームの後輩に聞くと、「塚田さんがライバル心を燃やしちゃって、小谷の少しのミスも許さないガチガチな管理してるんです。あれじゃ誰でも潰れちゃいますよ」と心配そうだった。



