時間を重視する家選びは、何かを捨てるからこそ成り立っている。その「何か」とは、住宅地に対する固定概念であると私は考える。たとえば、昔は「人生の最後に持ちたい自宅は庭付き一戸建て」だったが、今や都心居住の方が人気がある。倉庫街だった湾岸の人気を支えたのも、職住近接と価格の安さだった。

 落ち着いた住宅街とは異なる容積率が高いところでは、原色がアイキャッチになる商業施設か、殺風景な事務所が林立する。しかし、この風景が大都市らしさであったりする。見方を変えれば、それを「クール」だと評価する地方出身者が多いのも、東京らしさだろう。

「複数路線が使えます」の
謳い文句には意味がある

 複数路線が乗り入れている駅ほど、資産性は高い傾向にある。私は「2路線の価値は2割増」と言ったりするが、その理由は利便性の高い勤務先の数が増えるからだ。ある駅を便利だと思う人が増えれば、居住地としての需要は高まる。需要が増えれば需給バランスはタイトになり、家賃は上昇傾向になる。そして家賃が上がれば不動産価格も上がる、というわけだ。

 間違えてほしくないのは、「3路線4駅使用可能」といった広告上の謳い文句と現実とは違うことだ。それは、実はどの駅からも遠いことを意味していることが多い。私が指摘するのは、1駅で複数路線使えるケースだ。その意味で、半蔵門線・三田線・南北線の延伸や大江戸線は効果絶大だったと思う。

 今後の「腐っても○○」は、賞味期限が短くなる。総人口の減少、働き手の減少、若者の減少は劣化を早めるので、家選びの際には固定概念にしがみつかないようにしたい。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)