では、なぜお坊さん便が普及したのか。

 その背景には、お墓参りに行く時間がない、お布施の金額が不明瞭で僧侶とはあまり付き合いたくない、などの理由で先祖供養をする「菩提寺」を必要としなくなった葬儀や供養といった法事をめぐる消費市場の変化がある。

 その一方で、僧侶も収入源が減っており、少しでも法事に関わる機会を増やしたいというニーズがあった。

「宗教行為を商品化するな」
新勢力と旧勢力の対立

 同社の売上高に占めるお坊さん便の割合は「非開示」(同社広報)だが、同社の主力サービスであることは間違いない。

 では、なぜ売上に貢献してきたアマゾンでの取り扱いを終了したのか。

 その背景には、日本の伝統仏教界における唯一の連合組織「全日本仏教会」の存在がある。

「お坊さん便」がアマゾンで出品された際、同会は「お布施はサービスの対価ではない」「宗教行為を商品化してはいけない」といった反対声明を出した。

 こうして、新勢力のお坊さん便VS旧勢力の全日本仏教会という構図が生まれた。

 そんな中、よりそうは1年ほど前から「仏教関係者に対してお坊さん便の役割を説明する機会を増やしてきた」(同社広報)という。

 そして今年春ごろ、両者が直接対話する場が設けられた。

 その中でアマゾンでの出品が文化・宗教行事を商品化したように見えたり、不要なものだという誤解を広めてしまった側面があったこと。葬儀と弔いにおける仏事の重要な役割は、身近な人と死別した悲しみを癒す「グリーフケア」であり、その重要性を希薄化させてしまったことなどを、よりそう側が認めたという。