【シドニー】電気自動車(EV)のブームが次に訪れるのは、世界中の鉱山で活躍する大型車両かもしれない。
カナダの地方部やオーストラリア内陸部などで鉱山を運営する企業の間で、ディーゼルエンジン式の掘削機やホイールローダーなどの動力源をリチウムイオン電池に切り替える動きが活発だ。地下坑道の空気を汚染し、作業員の健康を危険にさらす排ガスを減らすのが目的だ。
カナダのオンタリオ州シャプロー近郊にあるボーデン鉱山では、鉱石を掘り出すためや、作業員を敷地内の各所に運ぶために約35台のEVが稼働している。鉱山を所有する産金世界最大手ニューモント・ゴールドコープは100%の電動化を目指している。電動掘削ドリルは年明けに納品される予定で、ディーゼル式トラックは段階的に廃止する見込みだと広報担当者は話す。
「究極の目標は大型ダンプカーだ」。時価総額で世界最大の鉱業会社BHPで低排出技術を統括するカーステン・ローズ氏はこう話す。
高馬力のダンプカーは地下坑道の底から何トンもの鉱石を運び出す。ディーゼルエンジンの馬力に匹敵するためには、現在の技術では巨大なバッテリーパックが必要になる。
BHPは豪州最大の地下鉱山オリンピックダムに1年前から小型EVを試験的に導入している。今月中にもう1台増やす予定で、豪州各地の鉱山にも拡大する考えだ。カナダで計画中のBHPの炭酸カリウム鉱山ジャンセンでは、何台のEVが配備可能かを検討している。
ローズ氏によると、いずれ鉱山から一切のディーゼルエンジン機械をなくしたいという。
より小規模な企業も環境への配慮を強化している。例えば、ヌーボー・モンド・グラファイトはカナダのケベック州に100%電動化した露天掘り黒鉛(グラファイト)鉱山を作る計画だ。