――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
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サウジアラビアの石油専売会社の株式はエクソンモービルのような銘柄なのか、あるいは怪しげな国債のようなものなのか。新規株式公開(IPO)を控えた国営石油会社サウジアラムコの企業価値を評価する場合、投資家が同社株をどう捉えるかによって、評価額は1兆~2兆ドル(約109兆~218兆円)超と異例の幅広いレンジになる。もしかしたら、このレンジさえも下回るかもしれない。
まず基本的な情報から見ていこう。アラムコは驚異的な規模の企業だ。一国にも匹敵する。評価額の下限でも全ブラジル株の総額を上回り、上限では韓国、オーストラリア、スイス、ドイツいずれの市場の株価総額をも上回る。全く独自の資産クラスだ。
3日に正式発表されたIPOが実際に行われると想定した場合、アラムコは世界で最も収益性の高い企業になる。保有原油埋蔵量は最大で、1バレル当たりの産出コストは最も低い。来年の配当予定額は750億ドルと、アップルの2019年度配当額の5倍に上る。アップルの配当額自体、S&P500構成企業で最大だ。
一方で、アラムコが実際に上場する株式は悲しいほど少なく、上場先も当面はサウジ国内の証券取引所に限定される。放出が検討されているのは株式の1%から多くても5%と、巨大な企業のほんのごく一部の株式にすぎない。それでも史上最大規模のIPOになる可能性はあるが、周知の事実を明白にするだけにほぼすぎないだろう。つまり、世界最大の石油会社はサウジ政府が保有するという事実だ(アラムコは政府持ち分を除外しているため、世界の株価指標をアラムコが占有することはない)。