就職氷河期世代の支援に
組み込まれた「ひきこもり」
30代半ばから40代半ばにかけての「就職氷河期世代」の支援について、政府は2020年度から3年間、集中的に取り組むプランをまとめた。
来年度の概算要求で約1344億円を投入する方針で、国を挙げての事業となっている。実は、この「就職氷河期世代活躍支援プラン」の中に、「ひきこもり(8050等の複合課題)支援」も、プロセスがよくわからないまま組み込まれた。
このプランはもともと、非正規や長期無業者といった就職氷河期世代の活躍の場を広げるため、政府が取りまとめることにしていた3年間の集中支援プログラム。6月に閣議決定されたのを受け、7月31日には内閣官房に「就職氷河期世代支援推進室」も設置された。
プランの全体像は、都道府県と地域ごとにプラットホーム(情報と人の集積所)をつくることで、非正規・無業状態の人には「就職・正社員化の実現」と「短時間労働者等への社会保険の適用拡大」、引きこもり者等の丁寧な支援を必要とする人には「多様な社会参加の実現」を目指そうという趣旨だ。
就職氷河期を中心とする非正規雇用者などへの支援の必要性については、当連載でもずっと訴えてきたことであり、大事な取り組みだが、引きこもり状態にある本人や家族の困りごとは、全世代でみられるものであり、就職氷河期世代に限った課題ではない。世代で区切る形の施策に、引きこもり施策をくっつけて行うのは、いびつな形になり、大きな違和感がある。
そもそも、引きこもらざるを得なかった人の多くは、就労現場などでパワハラや恐怖体験に遭って傷つけられ、安心できる居場所である自宅などに退避している人たちだ。過去の経験から、人と会うのが苦手、周囲の目線が怖い、家から出られないという状態の人もいる。
「引きこもり支援」の観点からいうと、これまでの国の支援が「子ども・若者育成支援推進法」を法的根拠に行われてきた結果、「就労した」「自立した」という実績の数字が評価の基準だった。そこに、当事者側のニーズとのミスマッチが生まれ、支援者側の「成果」に合わない当事者たちが数多く取りこぼされていった。