共著で関わらせていただいた『下流中年』(SB新書)が好調で、発売から3週間も経たないうちに3刷りが決まったという。講演会場へ持って行くために20冊購入を希望したら、著者に売る在庫さえないと言われた。

 やはり、働き盛りの世代には「他人事ではない」と実感している人が潜在的に数多くいることを改めて実感させられる。

非正規になって貧困化した
中年層が直面する厳し過ぎる現実

やむを得ず非正規雇用となり、厳しい生活を送る中年層が水面下で増えている(写真は本文と関係ありません)

 同書は、1970年以降に生まれた「就職氷河期」世代を中心に、新卒時に思うような就職ができないなどの理由で、契約社員や派遣社員として「不本意な非正規労働」を余儀なくされてきた中年層に光をあてている。

 こういう話を紹介すると、会社を辞めたのも、非正規になったのも、貧困化したのも「自己責任なのだから、社会のせいにするな」という趣旨の批判がよく寄せられる。 

 しかし、ネット上の書評には、<48歳の正規で働いていた人が、老親に介護が必要になり、いったん会社を辞めるというのは自己責任でしょうか>などと擁護する声も少なくない。

 一旦、非正規雇用の身になると、そこから正社員に這い上がることが社会構造的にもなかなか難しい「非正規スパイラル」に陥る。

 非正規労働者は、賃金が低いだけでなく、雇用保険や健康保険などに未加入の場合が多く、ボーナスや退職金に至っては、ほとんど支払われることもない。雇用も期限で区切られていることが多く、将来のライフプランが見通せないのだ。

「雇い止め」などで仕事を失えば、たちまち「貧困中年」に陥り、生活保護での生活や、引きこもるきっかけにもなっている。