容易ではない
韓国主導による朝鮮半島統一

 経済の側面から考えると、韓国が、経済水準が大きくかけ離れた北朝鮮との統一を主導するのは難しいだろう。

 南北の経済格差の問題に加え、韓国の資金調達力にも不安がある。アジア通貨危機やリーマンショックの際、韓国はドル不足に陥った。これは、韓国が慢性的なドル不足に直面していることの裏返しといってよい。ひとたび世界経済の状況が悪化すると、輸出依存度の高い韓国からは資金が流出しやすい。

 韓国の大手企業がわが国との関係を重視している背景には、自国内で円滑に資金調達を行うことへの不安があるとみられる。韓国が自力で北朝鮮の経済開発に向けた巨額の資金を負担しつつ、自国経済の安定を目指すことは容易なことではない。

 足元の韓国の雇用環境などを見ると、政府が南北統一に向けた国民の賛同を得ることも難しいと考えられる。韓国の若年層は、厳しい雇用情勢に直面している。それに加え、人口減少による社会保障制度への不安もある。「南北統一を論じる以前に、政治家は将来への不安を何とかしてほしい」というのが彼らの本音だろう。

 そうした社会心理の一端が、韓国の世論調査からも確認できる。一部の世論調査によると、南北統一への賛成は53%程度あるようだ。見方を変えれば、約半数は統一に賛成していないといえる。特に、若年層では南北統一への支持が相対的に少ない。労組の影響力が強い韓国において、政治家が改革を進めることも期待しづらい。東西ドイツの統一と比べると、南北統一のハードルはかなり高いといわざるを得ないだろう。

 その他にも、韓国主導による南北統一が難しいと考える要因は多い。

 まず、国際情勢の問題がある。歴史的に、朝鮮半島では米中露の利害がぶつかり合ってきた。現状、中国も、ロシアも、北朝鮮との関係を重視している。中露が米国の同盟国である韓国主導による南北統一を認め、協力するとは考えづらい。

 統一にあたって北朝鮮の独裁体制をどうするかも不透明だ。核兵器をどう処理するかなど、難題が山積している。今のところ、近い将来に南北が統一され朝鮮半島に一つの国が誕生する展開は難しいだろう。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)