文在寅政権が姿勢を改めたのは、米国の強い圧力に屈したためであるが、同時に日本政府の毅然とした対応によって、従来の主張を通せなくなったということでもある。

 だが、GSOMIAについては、韓国政府はそうした「真実」を国内で説明する必要はなく、諸般の情勢から国益にかなうと判断したと言って、国民の納得を得れば、政権が負う傷は最小限に抑えられるだろう。そのために、文在寅大統領はことの顛末を国民に説明するという「嫌なこと」を避けるのではなく、積極的に国益とは何かについて、直接国民に語るべきだった。

 4日前の19日、文在寅大統領は韓国文化放送(MBC)が生放送した「国民との対話」で、「最後の瞬間まで努力する」と余韻を残していた。しかし実際に述べたことは、「韓国が日本安保の防波堤になっているが、日本が安保的に韓国を信頼せず輸出統制を行なった」と従来の主張を繰り返しただけであった。

 韓国のリアルメーターによる世論調査(15日)では、GSOMIAを「破棄すべき」は55.4%と、「延長すべきだ」の33.2%を上回り、前回(6日)よりも7.1%上昇した。特に文政権の支持が多い革新層では「破棄すべきだ」という意見が強く、これを撤回すれば、文在寅大統領に対する支持も揺らぐといわれていた。

 しかし、こうした逃げ場のない状況を作り出してきたのは、文在寅大統領本人である。

 韓国でも、外交部、国防部など実際に安全保障を担当する部局は破棄に反対してきた。北朝鮮の最近の挑発行動を見ると、破棄を撤回すべきという人々の危機感は高まっていた。

 保守層と改革層での意見対立がある中で、これを撤回できるのは大統領だけだった。「国民との対話」で「最後の瞬間まで努力する」などと述べているが、やっていることといえば日本の譲歩を求めているだけで、韓国の国益を考えた指導力など微塵も発揮していなかった。これが、文在寅大統領の「劇場政治」だが、土壇場で国益に基づいた判断を下したことは幸いだった。

 ハリー・ハリス駐韓米大使は、「米国の朝鮮半島の防御に関連した能力に影響を及ぼしたことに失望した」として「在韓米軍と韓国軍はより大きな脅威に置かれることになる」と指摘していた。

 GSOMIAを巡って日米韓を巻き込んだ一連のドタバタ劇を演出した文在寅大統領は、韓国の安全保障を危機にさらしてきた。また、GSOMIAは、日米韓の安全保障上の連携にとどまらず、広く内政、経済、外交面で韓国に深刻な打撃を与えるとの現実を認識させられたのが、今回の一連の動きである。