韓国経済を下押しする
カントリーリスク

 今後も韓国から脱出を図る企業は増える可能性がある。企業が韓国のカントリーリスクに対応しなければならないことは軽視できない。それなりのコスト負担が必要になる。

 すでに韓国の安全保障体制の一部には不安定化の兆しが出始めている。米韓関係はその一つだ。11月19日に、米韓は防衛費分担に関する交渉を行ったが、協議は予定より早く終了してしまった。米国は韓国に負担の引き上げを求めた。しかし、韓国はそれを拒絶したとの観測もある。米国は韓国に再考を求め、席を立ったようだ。米国は、日米韓の安全保障連携に背を向ける文政権に強い懸念を示している。

 冷静に考えると、韓国が日米との安全保障の枠組みを維持・強化することは、韓国経済の安定に無視できない影響を与える。特に、韓国のドル調達力は、安全保障体制に大きく左右される部分がある。過去、アジア通貨危機やリーマンショックの際、韓国は自力でドル資金を確保することができなかった。

 世界の金融機関などにとって、北朝鮮と対峙する韓国に、長期間、資金を融通することは容易ではない。北朝鮮の軍事挑発などが激化した場合の対応を考えれば、それは当然だろう。韓国企業には、わが国金融機関との取引を通して潜在的な資金繰り不安を解消してきた側面がある。7月、サムスン電子やロッテが政府との経済対策会合よりも、資金繰りを確保すべくわが国の大手金融機関への訪問を優先したことは、それを確認するよい例だ。

 北朝鮮は、中国やロシアの庇護(ひご)を取り付けつつ、核兵器を保有し、体制維持を図りたいだろう。文政権は北朝鮮との融和を重視している。その姿勢が続く間、企業は朝鮮半島情勢を警戒せざるを得ないだろう。さらに、生粋の左派政治家である文大統領が、企業の活力を高め得る政策路線を取るとも考えづらい。

 文政権下の韓国において、各国企業が長期の目線で資金を投じ、事業を展開することは一段と難しくなる恐れがある。目下のところ、文政権がこの展開をどう回避できるかは予見が難しい。徐々に、韓国経済の低迷は長期化する方向に進んでいるように見える。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)