しかし、学校を回るのであるから各所の先生たちのお金に対する偏見(少なくないと思う)や、あれこれの指摘に十分対抗できなければならない。また、普及する知識が正しければ正しいほど、金融ビジネス業界から反発があることを覚悟しなければならない。

 この際に、少なくとも金融庁内では何を伝えるのかについて、大げさに言うと一言一句レベルで合意が取れていてバックアップが期待できるのでなければならないだろう。最低限、「この内容は文句なく正しい」との承認を受けたテキストブックが必要だ。

「老後2000万円問題」で露呈したように、金融庁は、大臣が諮問した審議会の報告書の受け取りを拒否するような不測の事態が起こりかねない危険な職場なのだ。担当者は幾重にも慎重を期するべきだ。

 また、良いテキストブックを作っておくと、自分以外の職員や外部の協力者にも知識の普及に協力してもらうことが期待できる。テキスト作りは重要だ。

 1回授業に行って、短ければ1時間半くらい、長くてもこの2〜3倍の時間で要点を説明して、あとは「全体を一度通読しておいてください」というくらいで、必要なことを伝えなければならない。となれば、テキストはどんなに長くても100ページを超えないくらいの配りやすい小冊子にまとめる必要があるだろう。自動車の運転免許の更新に行った際に、講習と共に配られる冊子くらいのイメージだ。

 社会人向けの教育にも使われるであろうことと、その対象の少なからぬ数が高齢者であろうことを考えると、字は大きく、図解はシンプルで分かりやすくなければならない。

 僭越ながら拙著では、『お金で損しないシンプルな真実』(朝日新聞出版)が最も近いと思うが、この小著の内容をさらに半分に取捨して、もっと分かりやすく書かねばならない。率直に言って、これは簡単ではない。