シリコンバレーの新たな現実、10兆円消滅の波紋Illustration:Lynne Carty/The Wall Street Journal

 シェアオフィス大手のウィーワークや配車大手ウーバー・テクノロジーズといった最も天高く舞い上がったシリコンバレーの人気者たちが、今年に入って計約1000億ドル(約10兆9000億円)の企業価値を失った。これを受け、ベンチャーキャピタル(VC)の投資家は一段と慎重になり、新興企業の一部は成長より収益性を強調するようになった。

 ここ数週間に見られる動きとしては、自動車定額使用サービスのFair(フェア)や、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を手がけるUiPath(ユーアイパス)が人員削減に踏み切った。電動キックボードのシェアサービスを提供するLime(ライム)は黒字化が可能なことを投資家に証明するため、業務見直しを進めている。

「われわれは5年前から続く陽気なパーティーのさなかにいたが、誰かが突然、照明スイッチを入れた」とクリス・ダボス氏は話す。同氏が率いるアホイ・キャピタルはVC企業や新興企業に出資している。「いまは全員が目を慣らしているところで、残りの時間をどう過ごすのか誰も見当がつかない。それがシリコンバレーの今の気分だ」

 新興企業全体としては依然、現金が有り余り、金利も歴史的低水準にあることから、未公開株市場がこれ以上急激に落ち込むことはなさそうだと投資家はみる。それでも大規模な価値崩壊によってVC業界には近年なかった不透明感が漂う。投資家は反省し、企業統治(コーポレートガバナンス)の厳格化を求めている。