つまり、セムコ社では、社員一人ひとりが「管理」されていない。おのおのが責任を持って、自分が会社に貢献するための働き方を自分で選び、そしてその成果を客観的に判断しながら、報酬まで決めているということだ。

 そして、問題解決や新しいことをしようというときには、関係する社員や興味のある社員が集まり、話し合いによって、ほぼすべてを決めていく。

 常識的には、そんな経営スタイルでは社員がサボったり、怠けたりして会社の業績アップを妨げると思いがちだ。

 だが本書によると、セムコ社の売り上げは、アントニオ・セムラー前CEOの時代のピーク時で年間400万ドルだった。ところがリカルド・セムラー氏が引き継いだ後、2003年には2億1200万ドルと、50倍以上に伸びたという。

自由すぎる組織を実現した
セムコスタイルの5原則とは

 冒頭に紹介した、私が関わるスタートアップも、セムコ社とほぼ同じような経営が行われている。

 一応オフィスはあるが、パソコンとインターネットがあればいつでもどこでも仕事ができるので、就業時間も就業場所も自由だ。

 会社の運営に関する細かなルールはない。取締役の3人がすべての情報を共有しており、何か問題が起これば3人で意思決定をする。

 給料も、役割と成果に応じて3人で話し合って決める。

 会社がある程度の規模になるまでは、社員がお互いを信頼し、顧客や会社に対してそれぞれ責任を持った仕事ができていれば、ルールがほとんどなくてもうまく回る。

 だが、3000人規模のセムコ社がこのようなスタイルを貫き通すには、本書によれば、次の「5つの原則」が必要なようだ。

(1)信頼
(2)代替コントロール
(3)セルフマネジメント
(4)徹底的なステークホルダーアライメント
(5)創造的イノベーション

 この中でもっとも重要なのが(1)の「信頼」。セムコ社では、一人ひとりの社員を「一人前の大人」として「信頼」する。これが全ての基盤になっている。

 会社のトップであるセムラーCEOは、一人ひとりの社員と、各自の裁量による判断を信頼している。だから、ルールや制度で管理しなくていい。 

 社員たちも、信頼して任されたからには、それに応えようと責任感を持って行動するようになる。