バブアーのジャケット「ソルウェイジッパー」を着て田園地帯を散策する、英国のチャールズ皇太子1978年4月16日、バブアーのジャケット「ソルウェイジッパー」を着て田園地帯を散策する、英国のチャールズ皇太子。Tim Graham/Getty Images

バブアーの創業は1894年。その起源は、水夫や漁師のためにワックスドクロスを提供したこと。スタイルアイコンたちが愛用することでも知られるそのジャケットが生み出される現場を訪ねると、そこでは未来へのまなざしと、積み上げられてきた歴史が共存していました。

 イギリス北東部の街、サウスシールズ。ある涼しい夏の朝、バブアーの工場を訪れると、ちょうどジャケットの製造ラインが動き出したところでした。ここでは、1日約650着のジャケットが完成します。ラインのスタート地点で作業するのは、ゲイリーという男性。彼は、エジプト綿に防水オイルが施されたワックスドクロスの丈を切る担当。そして次の工程を担当するメアリーが、パターンに従って裁断していきます。

 スタッフは作業に応じて、異なる色のユニフォームを着ています。例えば機械工は緑、監督者は青、品質管理の担当者は紫、という具合に。整然と並べられた机の上には、担当スタッフの子どもの写真が貼られたミシンが置かれ、黙々と作業が進められています。ジャケットがようやく形を成してくると、次の、組み立て工程へと送られるのです。

 バブアーのジャケットは、5つのタイプの人間を想定してデザインされています。漁師、ハンター、ライダー、兵士、それから、こうしたカテゴリーに属する人間として見られたい人々。

 いくつもの手が生地に触れ、そこに1世紀を優に超える歴史が織り込まれ、ようやく一着のジャケットが仕上がるのです。バブアーが設立125周年を迎えた今、ブランド形成に携わってきた人々、そしてそのジャケットの愛用者たちは、このファミリービジネスがいかにして、長きにわたって世界に名を轟(とどろ)かせてきたのか、思いをめぐらせていることでしょう。

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