流通網の再編は必須
出口が見えないままのGOサイン

 もう1つ、CASEをきっかけとした自動車産業変革の出口戦略が、流通網の再編である。

 例えば、ダイムラーは2025年までに世界市場での新車販売の25%をネット販売とする計画を発表済みだ。そうなれば当然、ディーラーの役割が大きく変わる。

 また、トヨタは2020年5月に全店舗全車種併売を始める。これは実質的な、トヨタ4販売系統(トヨタ店、カローラ店、トヨペット店、ネッツ店)の統廃合につながる動きだ。すでに、今年(2019年)4月に、東京地区ではトヨタ直系ディーラー各社がトヨタモビリティ東京として一元化されている。

 2020年4月には、部品卸業であるトヨタ共販33社が部品量販店ジェームスを展開するトヨタ直系のタクティーと合併することも、全店舗全車種併売によるディーラー統廃合に直結する動きであるとし、自動車部品業界では大きな話題となっている。

トヨタの全店舗全車種併売は2020年5月から全国規模に拡大。千葉のイオンモール幕張
 のトヨタ販売ブースにて
トヨタの全店舗全車種併売は2020年5月から全国規模に拡大。千葉市のイオンモール幕張のトヨタ販売ブースにて Photo by K.M.

 こうした自動車流通網の変革を進めるうえで、改めて浮き彫りになるのが「製販分離」だ。こちらも自動車産業界の古い体質である。

 そもそも、自動車メーカーは、自動車製造および卸売り販売が主業だ。つまり、自動車メーカーにとっての直接の販売相手はユーザーではなく、ディーラー(販売店)だ。テレビCMなどでは、自動車産業はあたかもB2Cビジネスのように見えるが、実態はメーカーとディーラーとのB2Bビジネスである。そのため、これまではメーカーとユーザーとの接点は極めて希薄だった。

 これを改善するのが、CASEのひとつである、通信によるコネクテッド技術だ。

 だたし、ここでも「コネクテッド技術革新ありき」ではなく、「ディーラー再編ありき」というCASEを活用した出口戦略だと考えられる。

 さらに深掘りすると、ディーラー統廃合とは単なる合併吸収だけに止まらない。

 これまでの自動車流通網は、一次流通(新車・レンタカーなどのフリート)と中古車販売という二次流通で構成されてきたが、これからは自動車メーカーがこれまでにない発想で「流通を操る」時代が来る可能性が高い。「製販分離」を根本的に改める、新しい事業構想だ。

 トヨタの定額制サブスクリプションモデルKINTOやカーシェアなどは、次世代自動車流通における「小さな駒」にすぎないと思う。もっと大胆な発想による、製造と流通の大変革を念頭に、日本を含めて世界各地で「水面下の動き」が続いている。

 こうした動きが表面化するタイミングを見て、改めて記事化する予定だ。

(ジャーナリスト 桃田健史)