日本銀行の黒田東彦総裁11月28日、フランスの市場振興団体、パリ・ユーロプラスが主催した都内開催のフォーラムで講演した、日本銀行の黒田東彦総裁 Photo:つのだよしお/アフロ

 黒田東彦総裁が率いる日本銀行が、年率2%のインフレ目標を2年程度で達成すると宣言して国債の大規模な購入などの異次元金融緩和策を開始したのは、2013年4月のことだった。それからこの10月までに6年半が経過した。

 しかし、日銀が重視する「生鮮食品を除く消費者物価指数」の前年比を見ると、10月は+0.4%だった。消費税率が2%引き上げられたことも考慮すると、目標の2%は依然としてはるか遠いところにある。ただ、「生活実感でいうと物価水準は近年かなり上がっているのではないか?」と感じている人は多いのではないだろうか。というのも、人々が抱く物価の印象は、頻繁に購入する品目に影響を受けるからである。

 総務省が集計している購入頻度別の物価指数を見てみよう(消費税を含む)。「1年に1度程度購入する品目」の価格水準は異次元緩和下のこの6年半で4.4%の上昇にとどまっている。それに対して、「頻繁に購入する品目」(月に2回以上購入する品目)は同期間に8.6%上昇した。

 特に食材の値上がりは急激だ。この6年半の累計で「肉類」は19.3%上昇、「魚介類」は32.1%上昇、「野菜・海藻」は18.7%上昇、「果物」は24.2%上昇した。

 スーパーマーケットに日常通っている人ならば、インフレは相当進行しているように感じられるだろう。特にエンゲル係数が高い家庭(所得水準が低い家庭や趣味・娯楽の支出を控えている年金生活の家庭)にとってはこの6年半の物価上昇はかなり厳しかったといえる。

 ただし、消費者物価指数は平均的な家計の支出のパターンを想定して品目ごとにウェイトをかけて集計がなされている。よって、たまにしか購入しないものの単価が大きい品目(耐久消費財など)の価格が横ばいまたは下落だと、統計上のインフレ率は生活実感よりも低めに表れることになる。