米国の穀物価格が急騰している。相場は6月以降に急変、7月20日には大豆17.6ドル、トウモロコシ8.2ドルに達し(いずれもシカゴ先物期近価格、1ブッシェル当たり)、2008年に記録した過去最高値を更新した。年初からの上昇率は、大豆が28%、トウモロコシが48%に及ぶ。
原因は、25年ぶりという米国穀倉地帯の干ばつだ。高騰の要因には投機資金の流入もあるものの、何より需給の逼迫懸念が大きい。
生育状況は悪化の一途をたどっている。7月22日時点の米国農務省調査で、作柄が「良・優」とされる割合は、大豆が31%、トウモロコシが26%。通常この比率は60%前後で、惨状と言う他ない。
これらの収穫期は通常10~11月だが、今後天候が好転しても、作柄の改善は期待できない。穀物の生育に最も大きな影響を与えるのは、開花・受粉期の天候だからだ。通常ならこれは7~8月なのだが、今年は生育が1カ月ほど早く、6~7月の干ばつが直撃する格好となった。
特に深刻なのは大豆だ。7月11日発表の農務省需給報告によれば、米国の期末在庫率(8月末時点での在庫量÷需要量)の予測は過去最低水準の4.2%。実態はさらに厳しいとの指摘もある。農務省報告は「生産量が減る分、需要量の予測も引き下げて帳尻を合わせた感が強い」(平山順・日本先物情報ネットワーク主任研究員)が、穀物は“必需品”で、実際には価格高騰や景気悪化があっても需要量はさほど減らないからだ。
もともと、今年の米国の大豆は作付面積が縮小していたため、「需給逼迫はもはや確定」(津賀田真紀子・マーケット・リスク・アドバイザリーアナリスト)だ。期待されるのは、米国と並ぶ輸出国であるブラジル、および中南米の供給増だが、それらの収穫期は来年3月以降であり、少なくともそれまで価格は高止まりするだろう。
一方、トウモロコシの作付面積は過去最大規模で、米国の期末在庫率予測は9.3%と大豆よりは高い。しかしトウモロコシは米国が世界の輸出の約5割を占め、他地域での代替が利かないため、「価格高騰がより長く続く可能性」(平山主任研究員)がある。