【ロンドン】 12日に投開票された英総選挙の出口調査によれば、ボリス・ジョンソン英首相は勝利を収めたもようだ。これは欧州連合(EU)からの離脱の旅の第1段階が終わったことを示唆する。
ほぼ4年にわたったEU離脱(ブレグジット)をめぐる国を挙げてのメロドラマの後、ジョンソン氏はようやく、自らまとめたEUとの合意の承認に必要な議会の過半数の議席を確保したとみられる。これにより来年1月31日のブレグジットが可能になる見込みだ。
これでEUとの離婚はまとまるだろうが、ブレグジットにからむ不透明感が払拭されることはない。英国がEUを離脱した途端に、複雑で対立点の多い問題についての交渉が始まる。英国と、その門前にある巨大貿易圏との今後の関係をどうするのかという問題だ。
こうした論議は、ブレグジットをめぐって行われた過去3年間の政治論争と似通ったものになり、長く続く英国の政治の分断を特徴付けるものとなるだろう。英国は、労働、製品、環境に関する規則などの問題で、EUの規範を受け入れるべきなのだろうか。それとも、一部のブレグジット支持派が求め、ブレグジット反対派が恐れていたように、以前ほど厳しい規則に縛られず、大胆に世界に目を向けた経済大国となることを目指して、EUと距離を置くべきなのだろうか。
今後何年にもわたる英国情勢の展開は、ブレグジットの決断の影響によって形作られるだろう。英国は、無視できない隣の経済圏であるEUとの経済、安全保障面の関係をうまく調整しながら、それ以外の世界における自国の役割を模索していくことになる。
1月31日にはついに、英国の外交官や当局者らに対しブリュッセルにあるEU本部の門が閉ざされることになる。英国の議員らは、欧州議会を去る。長年参加してきたEUの政策決定の場を離れ、今後は外部からの影響力行使に努めることになる。 EUの諸機関は外部からの影響を受けやすいが、英国からの影響は著しく低下することになる。
一方で、開かれるドアもある。EU加盟国としての束縛から解放され、英国は貿易協定の交渉を開始できるようになり、経済面で独自の規則を設ける余地が拡大する。
しかしこうした自由は、将来の英国とEUの関係がどんな性格になるかによって規定される。この問題の解決方法が、英国の社会、政治、経済活動全般に影響を及ぼすことになる。
EU当局者は、英国がEUを離脱した翌日に、英国との関係に関する交渉を始める構えだと述べている。双方は、英国が労働や環境などに関してEUの基準の多くに従うことを条件に、「関税ゼロ、クオータ(割当枠)ゼロ」の協定を目指すことで合意している。
英国には、離脱協定をめぐる分裂を再現するようなトレードオフが生じる。現行の貿易パターンを壊さないようにするため、EUとの緊密な経済関係を望むのなら、英国は多くのEUの規則や規制を受け入れなくてはならない。その規則や規制内容に、英国はもはや関与できない。より離れた関係を望むのなら、現在行われている国境を挟んだ商業活動は混乱するだろうが、英国は経済をどう管理するかについて自分で選択できるようになる。