石橋被告は自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われ、一審横浜地裁の裁判員裁判判決は上記の起訴内容をすべて追認。その上であおり運転と死亡事故の因果関係を認め、懲役18年(求刑・同23年)を言い渡していた。

 しかし、6日の東京高裁控訴審判決は危険運転致死傷罪の成立を認めたものの、審理に違法な点があったとして、横浜地裁に差し戻した。

「罪の成立を認めたなら、それでいいのでは?」と思われるかもしれないが、平たく言えば手続きが不適切だったので「ノーカウント。もう1回、やり直し」と突っ返したということだ。

法曹界の理屈に遺族落胆

 何が問題だったかだが、刑事事件の裁判では検察側と弁護側で見解が大きく異なる場合、争点を絞らないと審理が円滑に進まないため、事前にある程度のすり合わせを行う。

「公判前整理手続き」と呼ばれるものだが、この段階で横浜地裁は「危険運転致死傷罪は成立しない」との見解を表明していたというのだ。

 東京高裁は、この見解をいきなり変更して判決で成立を認めたのは「被告や弁護人に対する不意打ちで、判決に影響する違法な手続きだった」と強く批判。

 その上で、差し戻し審で危険運転致死傷罪の成立があり得るとの前提で主張・立証の機会を設けて「改めて裁判員裁判で審理を尽くすのが相当」と指摘した――というわけだ。

 まどろっこしいこと、この上ないのだが、法曹界というのは何よりも手続きを重視する。「法は厳格に適用すべき」との考えなので、少しの瑕疵(かし)も許さないのだ。