そして6月1日、H氏は女性を殺害した。土曜日だったため、H氏からの電話は、Y氏の携帯にかかってきた。共犯者のZ氏の前で、H氏に「殺す」と脅されたY氏は、結果として死体遺棄に協力することとなった。6月11日、逮捕されたY氏は、「もうこれで、H氏から脅されることも殺されることもなくなる」と、ホッとしたという。

 当時も現在も、Y氏には「公務員として、してはならないこと」という自覚はあった。しかし、成り行きは止まらなかった。

地方分権改革の終着点近くで
起こった悲劇ではないか

 むろん、生活保護ケースワーカーの業務が“キレイゴト”で済むはずはない。周囲を困惑させる行動、児童虐待が疑われる状況、そして暴力など、「処遇困難ケース」の課題は常にある。「複数のケースワーカーで対応する」「警察OBを配置する」といった選択肢もある。しかし、万能の解決策はない。

 関西の中核市の福祉事務所で査察指導員を務めるCさん(30代)は、「向日市は“ケースワーカー自己責任論”に陥っているのではないか」という疑問を語る。

「私たちは、貧困問題の最前線にいます。『貧』と『困』が重なった方々は、自らSOSを出せないことが珍しくありません。SOSを出さない責任をご本人に求めて“貧困自己責任論”で切り捨てるのではなく、そのSOSをキャッチできる社会をつくっていく必要があります。私たちは、その責任の一端を担っているはずです。でも都市部で、ケースワーカー1人が110世帯以上を担当していると、余裕がなさ過ぎて、隣の席のケースワーカーが困り果てていても助けられません」(Cさん)

 結果として、Y氏のメンタルヘルスは、良好な状態ではなくなっていた。Y氏個人に対する何らかのサポートは必要だったはずだ。しかしCさんは、それだけでは不十分だと考えている。