生活保護ケースワーカーを死体遺棄に走らせた「孤立職場」の病理京都府向日市の生活保護ケースワーカーが死体遺棄に手を染めた背景には、職場の影響もありそうだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

受給者の犯罪に巻き込まれた
ケースワーカーの「その後」

 今年6月12日、京都府向日市の生活保護ケースワーカー(29歳)が、死体遺棄の疑いで逮捕された。担当していた男性受給者(55歳)が殺害した女性の遺体を隠そうとした際、他の男性(52歳)とともに協力したのである。3名はすでに起訴され、10月2日に第1回公判が予定されている。

 ケースワーカーは生活保護に関して、受給者の「すべて」を握っている存在だ。力関係では、ケースワーカーの方が強くなる。しかしこの事件では、受給者が担当ケースワーカーを精神的に支配し、まるで“パシリ”のように扱っていたという。担当ケースワーカーの仕事ぶりには特に問題はなく、むしろ好感を持たれるものであった。

 類例のない事件であり、世の中の反響は大きかった。むろん、「ケースワーカーが担当している受給者の犯罪に手を貸す」などということは、絶対にあってはならない。それなのに、なぜ、事件は起こってしまったのだろうか。

 発覚から3ヵ月が経過し、そろそろ世の中から忘れられつつある事件だが、向日市役所や向日市議会では、現在もホットな話題の1つだ。9月10日にも、向日市議会の本会議において、市議の杉谷伸夫氏が事件のその後と今後に関する質問を行ったばかりだ。

 向日市議会では、事件に関する質問に対し、最初に副市長が答弁した。殺された女性の冥福を祈念し、市民に謝罪することを述べて深々と頭を下げる副市長の姿には、役職ゆえの義務というより、深い思いが現れているように感じられた。