バラク・オバマ前米大統領は2010年1月、下院本会議場に入って一般教書演説を行った。その時こう宣言した。「われわれの前には新たな10年間が広がっている」オバマ氏は、米国民がいら立ちと怒りを抱え(金融危機で傷ついた直後ではなおさら)、大声で叫ばれる政治的主張にうんざりしていると述べた。そして楽観的な調子でこう続けた。「これからの10年間は、米国人が自分たちの良識にふさわしく、その強さを体現する政府を手に入れる時だ」今やその10年間が終幕に近づいている。だが自分たちの政府と社会が、それほどの高尚なビジョンに沿った行動をしてきたと多くの米国人が言うとは到底思えない。むしろ米国社会でもその政治システムでも分断が一段と拡大し、強固になった。右派ではポピュリストやナショナリストの感情が、左派では社会主義者の感情が、過去10年間に並行して盛り上がった。その結果、政治的・社会的な中道派は、記憶にあるどの時代よりも不毛な場所になった。