設立20周年を迎えたNTTドコモが岐路に立たされている。iPhoneに翻弄されて「独り負け」の状態が続いていたからだ。新端末を引っ提げ、サービス分野に乗り出すなど反転攻勢に出始めているが、新たな戦略には疑問符が付く。加藤薫新社長の下、スマートフォン時代にドコモが向かう先に迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

 今春、NTTドコモでは、夏の携帯商戦に向けたスマートフォンの開発が山場を迎えていた。

「これではiPhoneに追い付けないぞ」

 丸山誠治プロダクト部長は、試作機の画面を指でスライドするたびに改良の指示を出した。

 こだわったのは操作性だ。iPhoneの画面は、1秒当たり約50コマ(フレーム)でできており滑らか。それに対し、昨夏発売したドコモのスマホは毎秒20コマ程度のものもあり、動作がカクカクして明らかに劣っていた。

 改良の結果、iPhoneを上回る操作性を実現、従来よりも約10倍速い高速通信サービス「Xi(クロッシィ)」も大半に採用した。平均的に使えば1日は持つよう、電池の持ちも4割ほど改善させた。

今年6月に発売された、サムスン電子製「ギャラクシーSⅢ」は操作性もよく、決済機能もあり、iPhoneの対抗機としてドコモは期待を寄せている。
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 代表格がサムスン電子製「ギャラクシーS3」。iPhoneよりも薄くて軽く、画面も大きい。6月の発売から2週間で20万台を超える順調な滑り出しとなっている。

 さらに、8月からは中高年向けの「らくらくフォン」のスマホ版も発売。画面を押すとブルッと震え、縦スクロールしかしないなど、初心者でも扱いやすくなっている。

 ここ数年ドコモは、iPhoneを手にしたソフトバンクやKDDIに劣勢を強いられてきた。そうした状況を覆し、反転攻勢に打って出る「武器」をようやく手にすることができたのである。