【フェニックス(米アリゾナ州)】ライトレール(次世代型路面電車)が町の中心部を通り抜け、12分おきにベルを鳴らして通勤客を吐き出している。わずか数ブロック離れた場所にある州間高速道路10号線は何キロにもわたって渋滞が続いている。
「毎朝ここを運転するのは難しいので、メサに車を駐車してライトレールに乗っている」。町の中心部にあるアリゾナ州立大学のキャンパスに通うジャッキー・リオスさんは、自宅があるチャンドラー行きの列車を待ちながらこう語った。
フェニックスをはじめ全米の多くの都市では、リオスさんのように車に見切りをつける人が増えている。
米国人の運転好きは変わりつつあり、それに伴って都市の在り方も変化している。過去3年、1人当たりの平均運転距離は年9800マイル(約1万5800キロ)とピークを付けた2004年から約2%減っている。カリフォルニアやニューヨークなどの大都市のある州のほか、ワイオミングやバーモントなどの地方の一部の州でも運転量は減少している。
急成長する広大な砂漠の大都市で車社会のここフェニックスでさえも状況は同じだ。アリゾナ州交通当局のデータによると、フェニックスのあるマリコパ郡の1人当たりの運転距離は06年から約7%減っている。州全体では11%の減少だ。
全米で運転量が減少している要因には、人口密度の高い都市部への人口移動、職場に近い場所に住むことや別の輸送手段を好む若者の増加、テレワークやネット通販・ストリーミングの台頭、通勤が不要な年金生活者の増加などが挙げられる。