「ガイナックス」を制作場所にしたのは
「古巣に対して筋だけは通しておきたい」との思いから

『新世紀エヴァンゲリオン』を、僕はもともと「ガイナックス」ではなく他の制作会社で作るつもりでいました。メインスポンサーになって、製作委員会を立ち上げてくれたキングレコードの方もそう望んでいました。しかし、「古巣に対して筋だけは通しておきたい」との思いもありました。

 当時の社長だった澤村武伺さんに話をしたところ「うちで作りたい」との回答があり、僕はガイナックスを『エヴァンゲリオン』の制作場所としました。

 ただ、当時のガイナックスの制作能力では1社でテレビシリーズをつくるのはとても無理なので、別のアニメ会社にも協力を仰いでいます。

新世紀エヴァンゲリオン
©カラー/Project Eva.

 その結果、幸いにも『新世紀エヴァンゲリオン』はヒットし、一時は会社をたたむ、たたまない、というところにまで来ていたガイナックスに、お金が入ってくるようになりました。

「お金が入る」と言っても、ガイナックスは経営陣の判断から製作への出資をしていなかったので、当初は映像作品からのリターンは僕の脚本印税と監督印税のみでした。それもキングレコードの善意によるものです。最初の収入は会社に相談して、低いギャラで無理して作業してくれていたメインスタッフらに分配し還元していました。

 一方でガイナックス自体は、『エヴァンゲリオン』関連のCD-ROMやパソコンゲームソフトで大きな利益を出していたそうです。「だそうです」と伝聞になるのは、先ほども述べたようにその当時僕は経営に関わっておらず、そのことをほとんど把握していなかったからです。

『エヴァ』という作品によって会社に予期していなかった大金が入り続けました。

行き当たりばったりの「浪費」が常態化
高額の脱税事件も発生

 ガイナックスという会社全体で、事業計画もなくコストも無視した行き当たりばったりの「浪費」が常態化してしまったのは、この辺りからだと思います。1997年には『エヴァ』製作委員会の好意で、ガイナックスに商品化の窓口を移し、収益の配分も受けられるようになって、『エヴァ』によるガイナックスの収入は増えていました。

 しかし、多くのお金や社員をつぎ込んだにもかかわらず成果を上げずに迷走し、損失だけが残った企画や事業が数多くありました。経営陣や担当責任者は、何度失敗しても反省することはありませんでした。お金があるので気にならなかったのです。

 そのような状態でも作品制作時に一番苦労したスタッフへ還元されることはほとんどありませんでした。

 もちろん他部署が『エヴァ』の名前を使って自分たちでお金を儲け、そのお金を自分たちで使うのは構いません。しかしその頃から、収益を上回る浪費が激しく、『エヴァ』のおかげで収益が上がっている客観的な事実を横に置いて『エヴァ』を利用しつづけるような経営に会社がシフトされていったと記憶しています。

『エヴァ』放送後のゲームや関連商品で利益が急激に大きくなったガイナックスで、1999年に澤村社長(当時)が高額の脱税事件を起こしてしまいました。