本書の要点

(1)ひみつ道具はのび太の長所や優しさを引き出すツールであり、それ自体が夢を叶えることはない。最終的に夢を叶えるのは、のび太の行動と努力である。
(2)のび太の「優しさ」が成功要因の一つである。のび太は集団において、常に大事なメンバーとして迎えられており、彼の優しさがしずちゃんのハートを射止めた。
(3)非常識な夢、欲望丸出しの夢は叶わない。夢は自分でコツコツ努力して叶えるものである。

要約本文

◆『ドラえもん』に学ぶ
◇ひみつ道具がのび太の長所を引き出した

『ドラえもん』のストーリーには、必ずといっていいほど「ひみつ道具」が登場する。そして、ひみつ道具には、常に何らかのメッセージが込められている。

 たとえば、「かならず当たる手相セット」の場合はどうか。はじめは手相がぴったり当たるが、そのうちハズレばかりになる。のび太は「手相なんか気にしているときりがない。ぼくなりに、がんばるよ」と宣言し、ドラえもんから「えらい!のび太くん」と激励される。

 ひみつ道具は、はじめのうちはうまく機能し、あらゆる問題を解決して、のび太に期待を抱かせる。しかし最後には、それでは根本的な問題解決にならないという結果で終わる。ドラえもんにおけるひみつ道具の基本的スタンスは、「ひみつ道具に頼らないで自力で問題を解決することがベスト」なのである。

 読者は、のび太がドラえもんやひみつ道具に頼っている場面に注目しがちだ。しかし、どの作品でも、のび太は必ず自分で試行錯誤しながら問題に取り組んでいる。のび太にとってひみつ道具とは、あくまでも「自分の長所・優しさ」を引き出し、背中を押してくれる、きっかけのような存在なのである。

◇ドラえもんは現代社会の縮図

 マンガ『ドラえもん(てんとう虫コミックス)』シリーズの全45巻は、823作品で構成されている。掲載作品は、著者の藤子・F・不二雄先生が創作した1346作から、先生自らがセレクトしたものだ。これらの作品に登場するのび太の主なトラブルは582作品。トラブルをカテゴライズしてみると次の7つに分けられる。友人関係(237作品)、のび太本人(110作品)、家庭(76作品)、学校(56作品)、恋愛(44作品)、遊び・運動(34作品)、金銭(25作品)である。