厚生労働省は2020年度から遺伝的に乳がんの発症リスクが高い患者に対して、将来のリスクを下げる目的の乳房切除術に保険適用することを決めた。有名なハリウッド女優が実施して話題にもなった手術だが、その実情や考え方について、多くの遺伝性乳がんの患者を診断してきた聖路加国際病院の山内英子ブレストセンター長に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
変異がある女性の場合
発症率は9~12倍
遺伝性乳がんの治療が大きく変わるかもしれない。
「がんのない方の乳房を将来の発症リスクを下げる目的で切除する手術を公的医療保険の対象にしてほしい」――日本乳癌学会などの要望を受け、厚生労働省は2020年度の診療報酬改定に向けての中央社会保険医療協議会の分科会で、リスクを下げるための切除に保険適用をするかどうか検討、昨年12月に保険適用することを決めた。
思えば2013年、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝性乳がんの可能性があるという理由から両側の乳房のリスク低減切除を受けたニュースは賛否両論、大変な話題になった。昔から、「親にもらった大事な身体に傷をつけるのは親不孝者」などという考え方がある日本では、「受け入れがたい」と感じた人も少なくなかったのではないだろうか。