中国で新型コロナウイルスによる新型肺炎が発生し、感染者は周辺諸国に拡大。2003年に8000人を超える感染者を出したSARS(重症急性呼吸器症候群)が脳裏をよぎる。SARSの時に最も問題になったのは、中国政府の隠ぺい体質だったが、果たして今回はどうだろうか。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 姫田小夏)
香港市民が思い出すのは
03年のSARS流行
中国で新型コロナウイルスの感染による新型肺炎が拡大している。1月23日時点で600人近くが感染し、17名が死亡、海外でも、日本やタイ、韓国、香港、マカオなどで感染者が報告された。人から人への感染も確認され、武漢市では日本人男性が重度の肺炎を発症して入院するなど、今後の影響が懸念されている。
香港でもにわかに緊張が高まっている。ドラッグストアではマスクの売り切れが続出し、複数の地元紙は毎日のように1面で、この新型肺炎を取り上げている。香港市民の脳裏には、2003年に香港を中心に8000人を超える感染者を出したあのSARSがある。
SARSが流行したとき、感染源としてハクビシンが疑われたが、今回の新型コロナウイルスは、野生のタケネズミやアナグマ、コウモリ、ヘビなどが疑われている。香港や広東省では野生動物を食する習慣があり、捕獲から飲食店に至る野生動物のサプライチェーンへの調査や居住区でのネズミ駆除が行われている。
その香港から先週帰国した筆者だが、日本人の友人から思いがけない一言をもらった。「あなた、感染してないでしょうねぇ…」――。新型コロナウイルスの“震源地”は湖北省武漢市だが、多くの人が移動するといわれる春節では、中国やその周辺の国に影響が及ぶからと、この友人は警戒していた。
筆者の脳裏にSARS禍の悪夢がよみがえった。2003年春、住んでいた上海から一時帰国をした筆者のアポイントがことごとく拒否されたという苦い思い出だ。